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| ● 神戸新聞96・10・13「地域ブックス西東」 湿地の保護をテーマとするアジアで初めてのラムサール条約締結国会議が1993年、北海道釧路市で開かれた。会議の模様はマスコミでも大きく報道され、以来、湿地に対する市民の関心が高まっているのは確かだろう。 本書は、九州地区に地域を絞り、湿地、その中でも特に渡り鳥の天国ともいうべき干潟について、その重要性と現状を報告している。著者は非政府組織(NGO)の活動家で、研究者。科学的なデータと分かりやすい記述が、初心者にも問題のありかを簡潔に教えてくれる。 今、自然環境の保護の分野では、市民の関心の高まりに比例して、出版物も増えている。しかし、その中には非常に情緒的だったり、あるいはごく一部の運動を取り上げるにとどまったりするものもあり、全体像をつかむのに適当なものが決して多いとは言えない。 そういう中で本書は、地域にしっかりと根差しながらも、全体の状況まで踏まえた作りとなっている。一読に値する良書だと言える。 ● 南日本新聞96・9・1書評 本書は、干潟の価値と現状を知るためのすぐれた入門書である。 私たちにとって身近な例である鹿児島県の重富海岸や奄美大島の問題も紹介されている。 先進諸国と日本とで干潟への対応が大きく異なることに読者は驚かされるだろう。干潟を保全し環境教育の場として活用している香港の例や、干拓地を元の干潟にもどす国家事業をはじめたオランダの例と比べて、日本の自然保護行政のあまりの貧しさが浮き彫りにされる。行政にとって真にやりがいのある仕事とは何かを考えさせられる。 著者は、各地の干潟に出かけてゴカイやカニを調べることを何よりの喜びとしている。泥の中のいろいろな生き物と出会う感動、そして干潟と共に生きる地域の人々に対する共感が本書全体にあふれている。この現場体験の長年の積み重ねが、「何としても干潟を守りたい」という著者の主張を支えている。 「目立つもの」だけに目を奪われてきた多くの読者には、まったく新しい視点に出会う喜びが待っている。(佐藤正典・鹿児島大学理学部助教授) |
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